令和3年9月16日、中国はCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定 通称TPP11)への加盟申請を発表しました。国有企業優遇や外国資本に対する様々な形での不当な介入、ウイグル人に対する民族浄化とも思える強制労働等の人権を無視した弾圧が行われていることが明らかである以上、加盟は困難であると思われます。加盟するためには例外なくすべての加盟国の同意が必要だからです。
中国の目的は、現在はまだTPPに加盟していない米国が主導する中国外しのデカップリングに楔を打ち、さらに台湾の加盟を阻止しようとしているのではないかと考えます。時あたかも中国の不動産大手「恒大集団」の破綻が免れない状況となっています。習近平政権と反目する前国家主席である胡錦濤閥に属している以上、国の支援は見込めないとの見方が大勢です。このように、法治ではなく人治が幅を利かせる場面に頻繁に遭遇する中国共産党支配の経済運営では、自由な貿易を維持することは全く望めないことを自覚しているために、TPP加盟申請を別の政治目的に利用としているのではないかと想像できるのです。
中国に続いて、今度は9月22日に台湾が加盟申請を行いました。台湾はじっくりと加盟に向けた準備を整えてきており、加盟の条件の多くをクリアできるまでになっています。日本との課題は、福島産などの食品の輸入を禁止しているので、これを解除できるかが加盟の大きな条件となります。
現在、日本はTPP議長国ですが来年はシンガポールが議長国となります。本年6月からは英国の加盟申請の審査が開始され、台湾も日本が議長国のうちに申請を行うべきだと判断したようです。なぜならばシンガポールは華僑を中心とした国であり中国との親和性を持っています。実際に中国はシンガポールから申請を歓迎するとの言質を取っているのです。
中国が加盟申請のアクションを起こしたのは、9月15日に突如として発表されたAUKUS(米英豪安全保障協力)が影響していることが想像できます。これまでのQUAD(日米豪印戦略対話)に加えて、中国包囲網を補強する本格的な軍事同盟が突然現れたのですから、中国との交易に依存するTPP加盟のアジア各国を巻き込むことで、中国の加盟がそれら国々へのメリットとなることを各国との個別交渉の基本としながら、同時に中国包囲網という圧力を分散させようと考えたわけです。
さらに中国の地方の一部だと言い張る台湾の加盟は、台湾の国際的地位確立と日米等の支援加速により独立に向かう危険性をはらんでいるため、あらゆる手段を講じて阻止しようとするでしょう。実は中国と台湾は2001年にWTOに同時に加盟しています。しかし現在の習近平体制をさらに継続するために台湾の併合を最大の目標として掲げている以上、台湾のみがTPPに加盟することはあってはならないのです。
日本は周囲を海に囲まれた海洋国家です。海が緩衝となり太古から外敵の侵入を阻止してきました。しかし近代的な海軍力を持ち始めた中国は大陸国家であるにも関わらず外洋への進出を試みています。目的は周辺の海を自らの勢力範囲として日米をはじめとする他国の影響を排除するためです。国際司法が中国の主権は認めないと判決を出したにも関わらず南シナ海を自国勢力下に置こうとしている姿は、自由な社会体制と民主主義を基本とした世界各国に大きな警戒感を与え続けています。
台湾も自由と民主主義の価値を共有する隣国です。台湾は大の親日国であり、台湾との友好関係は両国民の交流を促進させています。台湾が台湾であり続けることが日本の国益となり、東アジアの繁栄そして平和と安定をもたらします。私は日本版「台湾関係法」を制定して、台湾との各方面での連携強化を早急に行いたいと考えます。
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